勝どき作文教室では、「考えて伝える」力を育むため、毎回さまざまなテーマでレッスンを行っています。テーマに対してより深く考えてもらうために、新聞の記事や本を紹介することがあります。
教室でよく紹介する子ども新聞が、NewsPicks for Kidsです。正義とは何か?/夢と眠りの科学/世界の水問題といったオリジナル特集や、米紙・The New York Times for Kidsの翻訳記事など、他では読めないコンテンツがたくさんあるのが特徴です。
レッスンでは、子どもたちの意見を紹介する「子どもオピニオン」のコーナーをよく取り上げます。同年代の子どもたちが発信する意見に刺激を受けると、自然とディスカッションが生まれます。
今回、NewsPicks for Kids編集長の金谷亜美さんが、4月号特集「インディペンデンス・デイ 反抗期ってなんだ?」を取り上げたレッスンを取材してくださいました。NewsPicksにて6月23日付で配信されたニュースレターを、許可をいただいて転載します。
—-(以下、6/23付ニュースレターの転載です)—-
皆さま、こんにちは!
NewsPicks for Kids 編集部です。
今週は、子ども新聞を活用した
作文教室での取り組みをご紹介します!
将来、社会に出ていくにあたって必要な知識を「インプット」するだけではなく、子どもなりの考えを促し、対話を生むことで「アウトプット力」につなげることを大切にしているNewsPicks for Kids(以下、for Kids)。
多様な価値観に触れられるよう、NewsPicksオリジナル特集と、米紙「The New York Times for Kids」の翻訳記事をご家庭にお届けしていますが、実は作文教室の題材にもご活用いただいています。今回はそんな教室の一つ「勝どき作文教室」様に、私・for Kids 編集長の金谷亜美がお邪魔して、レッスンの様子を見学してきました。
申込期間を延長中!
6月号:オノマトペ・ワンダーランド
ことばの不思議で遊ぼう
現在、VOL.020 6月号『オノマトペ・ワンダーランド』について、
お申込期間を延長して受け付けしております!
最後の申込締切は7月10日。それ以降のお申し込みは、
VOL.021からのご購読となり、最初のお届けは8月となります。
この機会をお見逃しなく!
本教室は、子どもたちが「考えて伝える」力を楽しみながら育めるよう、生き物の観察や時事ニュース、探偵ゲームなど、ユニークな作文テーマを設定していることが特色です。
講師を務めるのは、記者・編集者、そして企業広報と、文章にまつわるキャリアを長年積んでこられた前野裕香さん。
文章力や思考力の土台は子ども時代に築かれるとの強い思いから、今もライターとして活躍するかたわら、作文教室を立ち上げ、運営していらっしゃいます。
前野裕香さん
1984年生まれ。記者・編集者、企業広報の経験を生かし、2023年に勝どき作文教室を開設。教室開設前は、2008年からの約10年間、東洋経済新報社で電機、医薬品などの業界担当記者、ビジネス誌やウェブメディアの編集者として活動した。2017年にスタートアップ企業の広報担当となり、上場を経て2021年から2年間、広報責任者を務めた。現在はフリーランスライターとしても活動。京都大学経済学部卒業。保育士資格保有。
「考えるきっかけ」を与える問い
5月某日、私がお伺いした日の作文テーマは、for Kidsの4月号特集「インディペンデンス・デイ 反抗期ってなんだ?」でした。
成長の過程で多くの子どもが経験し、中学生ごろにピークを迎える「反抗期」。
「反抗」と聞くと、悪いことのように思えますが、これは大人側の印象でつけられた呼び名に過ぎません。
本特集は、反抗期の本質を「人が生涯にわたって成熟していくための大切なステージである」と、子ども視点に立って捉え直そうというものです。
レッスンに参加していたのは、小学校4〜6年生の子どもたち4人。反抗期が訪れる少し前の年齢ということで、まず前野先生からは一つの問いかけが投げかけられました。
Q「子どもが大人に反抗するとき、具体的にどんな行動を取ると思いますか?」
「いっつもしているよ!」と、さっそく手が挙がります。「こないだは親に怒られて腹が立ったから、輪ゴム銃を撃ったんだ」。
私自身、小4、小6という反抗期手前の「ギャングエイジ」を子に持っていることもあり、「どこのご家庭も同じだなぁ」と思わずクスッとしてしまいます。
こうして実体験もシェアしつつ、紙面に掲載されている「反抗期の経験談」をみんなで一緒に読んでいきます。
「親の決めつけがムカつく」「何もかもが面倒くさい」、それから「アメリカには反抗期がない。日本の子どもには自由が少ないんじゃない?」というNY在住キッズの意見まで。
レッスンの後半で書く作文の土台として、「この中で、自分も共感できるポイントがあればメモしておこう」と前野先生は声をかけます。
ロールプレイでテーマを体感
次に取り組んだのは、ロールプレイです。二人ひと組のペアになり、親役と子ども役に分かれて、態度や表情も含めてなりきりながら、迫真の演技で大人と子どものバトルが繰り広げられました。
こうして「反抗期とはどういう状態か?」を体感することが、作文を書く上での材料になっていくといいます。
さて、作文に取り掛かる前の最終段階です。ペア同士でロールプレイの感想をシェアしたのち、再び前野先生から問いかけが行われます。
Q「反抗期の子どもは、“なぜ”まわりの大人に反抗すると思いますか?」
「怒られて、うざい、ムカつくと感じるから?」「ストレスが溜まっているときに何か言われると、面倒くさいと感じるから?」など、より具体的な意見が挙がり始めます。
じゃあ、なぜ親の言うことが「うざい、ムカつく」「面倒くさい」と感じられるのだろうか。
そこで改めて紙面にヒントを探し、公認心理師・佐藤めぐみさんのコメントをみんなで読んでみます。
「この時期には、『一人前の人間として認められたい』という考えが強まります」
「一方で、実際にはまだ親に頼らなければ生活できない場面も多く、(中略)『離れたいのに離れられない』という心のもがきが、大人たちへの反抗的な態度という形で現れます」
「一人前になりたいって、自分でも思うことあるなあ」「『心がもがく』ってどういう状態だろう?」「心が、赤ちゃんみたいに駄々をこねることかな」など、前野先生と子どもたちの対話は、一層深まっていきます。
伸ばすコツは「いいところ8割」
ここまで来たら、いよいよ「反抗期とは何か」をテーマにした作文タイムです。
自由に発言していた子どもたちは、一転して集中モードに。鉛筆が走る音が静かに聞こえるなか、それぞれの原稿用紙が2枚、3枚と、あっという間に埋まっていきます。
前野先生は一人ひとりを見て回りながら、「いいね、いいね」「なるほどね」「ここは、もう少し具体的に書いてみたら?」などのアドバイスを行っていきます。
こうして30分ほどで書き上げた作文は、実体験やロールプレイを経て感じたことを踏まえながら、思い思いの意見が込められた作品になりました。
書いた作文をお互いに発表し合い、完成の印にお気に入りのシールを貼って、レッスンは終了です。子どもたちが元気に帰っていったあと、前野先生に「作文へのアドバイスのコツ」についてお伺いしました。
作文が苦手だと親御さんが感じて来るお子さんが多いこともあり、教室ができるだけ楽しくなるようにしています。
最初は『自分は作文が書けない』という自己評価で来た子が、とりあえず楽しいからと半年、1年継続するうちに『できるかも』『割と書けるな』と変化していくことを目指しています。
また、自信を持って意見を伝えられないケースも多いので、声かけの方法を変えたり、難しそうな場合は選択肢を示したりして、レッスンの中で『考えを発信する』回数を増やすことも意識しています。前野先生
添削のしすぎは子ども本人のやる気を削いでしまうため、NGだそう。「いいところに8割注目」しつつ、言葉の用法が違う場合は正したり、表現のバリエーションが増えるようなアドバイスをしたりしているとのことです。
楽しい雰囲気で、自身の経験・体感も大切にしながら、子どもならではの表現に注目してみる──。ご家庭の対話でもヒントになりそうなお話を、たくさん教えていただきました。
「勝どき作文教室」様、そして生徒のみなさん、取材へのご協力をありがとうございました!
VOL.020 6月号は
さまざまな「ことば」について大特集!
オノマトペ・ワンダーランド
ことばの不思議で遊ぼう
私たちが、普段なにげなく使っている「ことば」。しかし、ふと立ち止まって考えてみると、ことばにはたくさんの不思議があることに気づきます。
今回は、それを解明する糸口として「オノマトペ」の面白さを徹底解剖。オノマトペを手がかりに、ことばの変化のプロセスについても取り上げ、ことばのクリエイティブへといざないます。
そのほか、「🏟スポーツ選手は暗号で話す」「🗣政治家の失言」「💨イヤな質問を避ける方法」「👄あなたの声で、29か国語がペラペラになるAI 」など、盛りだくさんでお届けします!
※2024年6月28日時点の情報です。