勝どき作文教室の生徒さんの作品やレッスンの内容をご紹介します。
生徒さんの作品「スポーツを見て記事を書こう」
作文では、「見たこと」「聞いたこと」を自分の観点でまとめることが大切です。観察力を鍛えるため、スポーツの短い動画を見て、自分なりに文章にまとめる練習をしました。
・どのようなスポーツか
・競技中、選手はどのような動きや表情をしているか
・競技の結果は
といった、読み手が知りたい情報を入れて書けるように取り組みました。
レッスンの前半では、新聞記事などを紹介し、競技や選手について理解を深めました。後半では、大事なポイントを何度も繰り返しスロー再生し、選手の動きをできるだけ細かくメモに取ってから作文に取り組みました。
生徒さんの作品を二つ紹介します。
※読みやすさの観点から、改行や読点などの調整を行っている場合があります。
4年生の生徒さんの作品
7月28日、パリオリンピックのスケートボード女子ストリートで吉沢恋選手が金メダルを取りました。
スケートボードとは身近なところにあるかいだんや手すりなどをおいた場所で、板を回てんさせ、ジャンプなどのわざを使ってきそうスポーツです。
吉沢選手はしせいをまっすぐにしてバランスをくずしにくくしています。その様子を観客がかたずをのんで見守っていました。わざが決まったことをかくしんして空を見上げながらよろこんでいました。
ぼくは、スケートボードは自分をきたえてくれるとくべつな物だと思いました。
【コメント】選手の動きだけでなく、動画に映り込んだ観客の様子までよく観察できています。「かたずをのんで見守る」「空を見上げながらよろこんで」といった表現から、会場の様子が伝わってきますね。「スケートボードがどのような存在か」という抽象的なテーマについても、選手のことをよく想像して書くことができました。
5年生の生徒さんの作品
北口榛花選手(26さい)は、パリオリンピックのやりなげでゆうしょうしました。記ろくは、一投目65メートル80センチです。北口榛花選手は、北海道出身で、旭川東高でやりなげをはじめました。15年の世界ユース選手権でゆうしょうし、頭角を現しました。
(中略)
北口榛花選手はやりをなげる前は落ち着いていて、やりをなげたあとは力強い表情をみせました。助走をする前に11回ジャンプをしていて、頭の横にやりをかけていました。やりをなげる時は、左足でふみきり、いっぱい体をねじっていました。やりは最初38.46度の角度でしなるように高くとび、真下に落ちていきました。
【コメント】後半の描写が特に素晴らしいです。助走してからやりが着地するまでの約15秒間をていねいに観察し、選手の動きや表情、やりの動きを表すことができています。投げる瞬間の「左足でふみきり、いっぱい体をねじって」という表現から、選手の息づかいが伝わってくるようですね。
秒単位で変わる動きを表現するのは難しいことです。ここで紹介した作品の生徒さんたちは、粘り強く観察し、自分なりの観点を表現してくれました。読むだけで、競技の様子を想像することができます。
生徒さんの作品「わたし・ぼくの枕草子」
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる」。誰もが知っている清少納言の「枕草子」を鑑賞してから、自分だけの枕草子を書きました。
レッスンの冒頭では、清少納言がどんな工夫をして風景を描写したかを考えました。レッスン後半では、自分が好きな季節を選んで、「枕草子」のように表現しました。
生徒さんの作品を二つ紹介します。
※読みやすさの観点から、改行や読点などの調整を行っている場合があります。
① 3年生の生徒さんの作品
夏はホタル。田舎で夜に外へ出ると、たくさんのホタルが光って飛びかっている。ずっと見ていると、人がランタンを持って歩いているように見える。時間がたつとやがてホタルは高く飛んでいつしかいなくなり、外は明るくなる。飛び去っていく時のすがたがとてもきれいだ。
冬は雪。雪合戦をしてあそび、かまくらを作ってきゅうけいする。ぽつぽつとふっている雪が幻想的だ。
【コメント】夏と冬、どちらも風景が目に浮かび、その場にいるかのような感覚になります。ホタルがランタンのように飛びかう様子と、ホタルが飛び去り外が明るくなった様子を対比させているところが、とても魅力的な作品です。
② 3年生の生徒さんの作品
夏は旅行。ひこうきに乗っている時はとてもウキウキする。夏休みが長いから思いっきり旅行ができていいなあ。
秋はお月見。まん月をながめながら食べるおだんごは、いつもの倍おいしい。月からおひめさまが来たらもっとうれしい。
冬は雪。赤い手ぶくろが白くそまると冬だなあと感じる。朝おきてまどを開けてやねが白くなっていると、さっぱりしていて気もちがいい。
春は進級。学年が一つ上がると心がドクドクとする。次の一年は何がおこるのかなあと。四月八日。私は赤いランドセルをせおって、さっそうと歩く。
【コメント】それぞれの季節の楽しみが伝わります。「月からおひめさまが来たら」「(進級で)心がドクドクとする」など、今ならではの感覚を、素直に豊かに表現してくれました。
大人からすれば、新学期もお月見も、毎年やってくる当たり前の出来事ですが、子どもにとっては、人生で何度目かの新鮮な体験です。もしかすると、今年の雪合戦は、自らの言葉で表現できるようになって初めての雪合戦かもしれません。
言葉にして残しておくと、子ども時代だけの感覚を後から振り返ることができます。それは、写真では残せない思い出になります。
作文レッスン「身のまわりの物を説明しよう」
身近なものを観察して説明文を書くレッスンを紹介します。
クイズ「何が入っているでしょう?」
レッスンはクイズから始まります。袋の中に入っている物の形や大きさ、色、用途を細かく伝えて、何が入っているかを当てるゲームです。これは「描写」の練習になります。
まずは講師からクイズを出します。
「銀色」「数本のワイヤーを曲げてできている」「気球のような形」「持ち手がある」「料理に使う」「メレンゲを作れる」といったヒントを出していくと、子どもたちから「コイン?」「スプーン?」など答えの候補が上がります。
答えは「泡立て器」。頭には思い浮かんでも、名前が思い出せなかった子もいて悔しそうです。
今度は子どもたちに、一人ずつ問題を出す係になってもらいます。これはとっても盛り上がります!
これから取り組む作文のイメージを持ってもらうために、見本となる作文を音読します。先ほどクイズで使った「泡立て器」をテーマにしたオリジナル教材です。
今度は自分で説明してみよう
さて、説明の練習をして、説明文のイメージを持てたら、いよいよ作文です。形や大きさ、素材などメモをとってから作文に取り組みます。
何が子どもたちの心にヒットするかわからないので、さまざまな題材を持っていきます。たくさんの題材の中から子どもたちに選ばれたのは、以下のような題材です。
・アルミネットスポンジ:とても人気。角度を変えるとキラキラ光ります。
・和風ドレッシング:未開封のもの。具材の描写が面白いのだそうです。
・ティッシュペーパー:外側と内側で素材が違って、観察しがいがあります。
・十円玉:なじみのあるものですが、何が描かれているか観察したことがある人は、少ないのではないでしょうか。
ほかにも、自分の持ち物の中から「シャープペンシルの芯」「ふせん」「戦艦」を書いてくれた子もいました。自分で選んで観察するので、意欲的に取り組めます。
作文レッスン「ハーブティーで身のまわりのものを調べよう」
マロウブルーという紫色のハーブティーを使い、身のまわりのものの性質を調べて、作文に取り組みました。
マロウブルーは中性だと色が変わりませんが、酸性だと赤っぽくなり、アルカリ性だと青っぽくなります。掃除などに使う「クエン酸」と「重そう」をそれぞれマロウブルーに入れてみます。クエン酸は酸性なので、マロウブルーは赤っぽくなります。反対に重そうはアルカリ性なので、マロウブルーは明るい青色に変化します。
自由に実験をするから飽きない
レッスン冒頭では重曹とクエン酸を使って見本の実験をします。色がすばやく変化する様子に、子どもたちは俄然興味を示してくれます。
実験の材料には、レモン汁や炭酸水、梅干し、台所用洗剤、砂糖、小麦粉などを用意しました。子どもたちには5〜6つのプラスチックカップにマロウブルーをに入れて渡し、材料を自由に選んで実験してもらいます。
「入れる量を変えたらどうなるかな」
「何を入れたらそんなに青くなったの?」
子どもたち同士でも声をかけ合いながら実験をして、結果をメモします。材料を自由に選ぶるので、一人ひとり違う結果が出るのも面白いところです。複数の材料をまぜて実験をするなど、工夫する姿も見られます。
「発見」が目の前にあれば書ける
作文に取り組むとき、生徒さんから「書くことがない」という言葉が出ることがあります。そうしたときは「書くこと」=「伝えること」ができるまで質問を重ねます。
ただ、観察のレッスンの場合、「書くことがない」という言葉はほとんど聞こえてきません。新たに発見したことが目の前にたくさんあるからです。「自分だけが発見したことは、他の人にも伝えたいから必ず書いてね」と声をかけると、張り切って結果を書いてくれます。
生徒さんの作品「柿の観察」
まるごと一つの柿と、断面を観察できるよう半分に切った柿を配って、自由に観察してもらいました。
「学校や家では注意されそうな観察方法でも、周りの人に迷惑をかけなければ大丈夫だよ」。そう伝えると子どもたちは柿を転がしてみたり、夕日の色と比べてみたり、持っている文房具で突いてみたりといろいろな行動を始めます。
自由に観察してもらうのにはわけがあります。作文が書けない理由の一つは「書きたいことがないから」です。これはとても深刻な問題で、多くの子が文章表現やスキル以前につまずいています。このためレッスンの前半は書きたいことを引き出すために使います。
書きたいことができれば、筆が進む瞬間がやってきます。柿の観察のレッスンも、途中までは冷や冷やするほど賑やかでしたが、最後の5分間は鉛筆が走る音だけが聞こえていました。
生徒さんの作品を二つ紹介します。今回のレッスンでは、作文を書いた時間は15分程度です。
※読みやすさの観点から、改行や読点などの調整を行っている場合があります。
生徒さんの作品①
今日はかきのかんさつをしました。
色はオレンジ色で、中の果実は白です。さわった感じはまっすぐなところはかたく、角はやわらかかったです。
へたはこい緑色のところは実はくっついておらず、黄緑色のところは実にくっついていました。ぼくがかんさつしたかきは、本当はたねができるところはとうめい感がありぷにぷにでした。もしぼくがこのかきだったら、子孫を残せなくてとても悲しいです。
シャーペンのしんをかきに落とすと、細いところだけささります。シャーペンのしんをのばして落としてみるとささりますが、ぬくとしんがなくなっています。
色は夕焼けとくらべてみるとちょっとこくあざやかです。断面も見てみると、しんを中心にすすきみたいにもようが広がっていました。
【コメント】観察したのは種なし柿でした。本来種がありそうなところが「とうめい感がありぷにぷに」していたというのは素晴らしい着眼点です。さわったり突いたりと自由な発想で観察しています。夕日に柿をかざして「くらべてみるとちょっとこくあざやか」と表現してくれました。
生徒さんの作品②
今日カキをかんさつしました。
手ざわりはつるつるでホワイトボードの車輪より大きいです。横の大きさは4センチくらいです。カキはまるで六角形のタイヤのようでした。かたさはガラスよりかたそうでした。
へたは星のような形でした。へたの色はウーロン茶のような色でした。
だんめんを4分の1に切ったカキをさかさにして、先をたたくとシーソーのようにゆれました。
図かんで調べるとカキは日本や中国で古くから育てられているそうです。
家で秋のみかくのカキを食べたいです。
【コメント】観察のときホワイトボードのそばにしゃがんでいる姿がありました。その後メモを見て、柿の大きさを比較する対象を探してくれていたことに気づきました。「六角形のタイヤのよう」「ウーロン茶のような色」といった例えの発想が豊かです。構成にも気を配って書けています。